Keep ON本誌のアナザーストーリーをお届け!

 Keep ON 2016 AUG vol.23 
wacci

人の温もりって音にするとこうなるんだ。wacciを聴いたときそう思った。初めて耳にしたときから自分の心の音とリンクして、もともとそこにあったかのように、慣れ親しんだ存在になる歌。ここではそんな楽曲を生み出すメンバーの日常の話を。理想への苦しみ、支え、光についてーー心になじむ音の根源をのぞいてみた。本誌記事と合わせてどうぞ!

2016.10.14(Fri.)UP

社会人1年目の姉から「毎朝この曲を聴いて通勤するんだ」というメッセージの後に、「大丈夫」のMVのリンクが送られてきた。どんな自分であっても、「おかえり」の言葉をくれる人。その人に早く「ただいま」を言いたくて、そうすれば沈んだ気持ちも救われる気がして、帰り道も足早になる。「大丈夫」はそんな曲だ。もともと日常にあったかのように自然に映り込む彼らの音。5人の感じていた日々の中での苦しみ、その毎日を支えるものとは。

こういうふうに見られたい、は常にあるのかなって

—— 「大丈夫」の歌詞にもありますが、誰かの理想に苦しんだことは?

橋口 ありますか?(←取材者に聞く)
村中 質問を質問で返すんじゃないよ!(笑)

—— 私は周りから持たれているイメージに嫌だなあと思ったことはあります……。

橋口 わかる、わかります。特に音楽で仕事していると、それはバンドとしてありがたいことだったりもするんですけど。例えば、僕はボーカルなんですけど、

—— あ、はい。知ってます(笑)。

橋口 ボーカルに見えないと思うんですけど(笑)、もっとボーカルとしてこうありたいとか、こう見られたいとかっていうのが常にある。ただ意外と、誰かのまねをするとかかっこつけるとかじゃないほうが、伝わったりもするから。

—— 作られたものではなく。

橋口 そういうところの見極めは大変だなって思いながら考えますね。あとはやっぱり自分の目標を高めに設定しすぎちゃって、自分を苦しめているというか。あいつはできるのに何で俺はできないんだろうって悩んだり……

—— (大きくうなずく)

橋口 あ、わかります?(笑)そういうのって、どの仕事、どの立場でも共通する気持ちなのかなって。それこそ(「大丈夫」が主題歌のドラマ『37.5℃の涙』のように)、理想のママになりたい、子供にはちゃんとしなきゃ笑顔で接しなきゃって思うことでどんどん自分を追いつめてることもあると思う。(「大丈夫」の詞は)そういうのにみんなが共感してくれるといいなって書いたところでもありますね。

過去に感じた気持ちを書くようにしてる

—— 歌詞は主に実体験を?

橋口 実体験じゃないことも多くあります。ただ、感じた気持ちとかは必ず自分が過去に感じたことを書くようにしてて。上から下まで最初から作ることもあれば、途中でこの人(村中)が「やっぱ別れる歌にしよう」って言って、途中から人が死んだり……
村中 いなくなっちゃうやつね!(笑)
全員 あはは(笑)。

気持ちは帰っている(笑)

—— 「大丈夫」は大切な人のもとへ帰りたくなる歌ですが、皆さんはその場から速攻帰りたくなるくらいつらかったこと、恥ずかしかったことはありますか?

橋口 (村中を見て)い~っぱいあるよ?
村中 あるんですけど、何かやっぱりね、記憶から消してるんだよね。
全員 あはははは(笑)。
村中 恥ずかしかったこととか、覚えてるほうがどんどん……
小野 つらいからね。
村中 つらいし、もう二度とすまいってなるんだけど、俺記憶消しちゃうから、同じこと何回もするんだよね。
橋口 クズ、クズです(笑)。
因幡 でもだんだん大人になってくると、逆に帰りたくなくなるような、つらかったときに、帰りたくならないというか。なんだろう、一応向き合うし、きっと投げ出せないのもわかってきたりしているから。気持ちは帰ってるんでしょうね(笑)。

—— 気持ちは自由ですもんね(笑)。

因幡 けどそれが、表に出るときに途切れないものとしてあるから。その質問で言うと、僕は結構やっぱ子供のころの体験の話を思い出しますね。ケンカして、仲よかった子と絶交してもう学校行きたくないとか。大人になってからだとなんだろうな~。
村中 わりとね、一言で片づけちゃうようになっちゃうかもね。
橋口 例えば?
村中 「若かったし」とか?
小野 許せるようになった?
村中 それ! 許せるようになっちゃうから、あんまり恥ずかしいとは思わないのかも。
橋口 ちなみに帰りたくなる?(←取材者に聞く)

—— 実際に帰るわけじゃないですけど、安心できる場所に帰りたい、みたいな。

村中 そういう意味の歌でもあるかもね。ほっとしたいってことだもんね。
橋口 でもソロでライブやって、その後バンドでライブするとやっぱほっとしますね。なんかそういうのあるんじゃないですか。帰りたくなる場所みたいな。気心知れてない人と飲んだ後に、気心知れてる人と飲んだらね。
横山 ああ~それすごくわかる!
小野 この時間早く終わんねえかなって思ってた後に……
全員 ああ~(笑)。
橋口 そういうささいなことはたぶん、たくさんあると思いますね。

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PROFILE

wacci
(ワッチ)

▲写真L→R 小野裕基(B)、因幡始(Key)、橋口洋平(Vo & G)、村中慧慈(G)、横山祐介(Dr)
聞く人全ての「暮らし」の中にそっと入り込んでいけるような歌を届ける、サテライト・ポップスの新星5人組バンド。

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